オフメットの隙間の雨粒
土砂降りと呼んでいい雨だった。
目覚まし代わりの雨音は心の芯までずぶ濡れにさせる。
ゴアテックスのマウンテンパーカーは今か出番かと散歩前の犬のように待機している。
ダボダボのレインパンツに足を通し、裾を引きずって長靴に足をねじ込む。
暗澹とした気分は晴れる兆しがない。
久しぶりのまとまった雨は視界を奪うほどだ。
トンネルで息を止めるように、会社につくまでの辛抱と雨粒を全身で受け止めながらアクセルをひねる。
ウェアも靴も完璧なはずなのに、どこからか雨粒が侵入してくる。
オフメットとゴーグルの隙間だ。
虚空を睨むように顎を引き、オフメットのツバで弾こうにも防ぎ切れない。
雨粒は顎を伝いインナーまで到達。
20度前半の荒天日には堪える。
雨の日は毎回オフメットを悔やむのに、頑なにフルフェイスは買おうとしない。
きっとわかってくれるだろう全国の頭のおかしいオフローダーへ捧ぐ。