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【書籍紹介】リーダーの仮面「いちプレーヤー」から「マネジャー」に頭を切り替える思考法

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はじめに

本書は株式会社識学の代表取締役社長の安藤広大さんの著書です。
マネージャーに必要な考え方が端的に述べられている非常に明快な実用書です。

本書で述べられている5つのポイントについてまとめてみました。
私が特に重要と感じた項目についてピックアップして記載しますので、全文が気になる方は是非読んでみてください。

 

マネージャーに必要な考え方とは

まず初めに、本書で紹介されている考え方を私なりに端的にまとめると、「感情や人間関係でチームを作るのではなく、徹底したルールのもと事実だけに着目して運営していけ」ということです。

この考えを、①ルール、②位置、③利益、④結果、⑤成長の5つの観点からより具体的な手段としてブレイクダウンして紹介しているのが本書になります。

それぞれ具体的に見ていきます。

①ルール:場の空気ではなく言語化されたルールを作る

チームには、誰にもわかる、誰にも守れる明文化されたルールが必要だと述べられています。

理由としては、人はある程度制限されている方が行動しやすい(ストレスがない)ことや、ルールが無いとリーダーの顔色を窺って行動するようになるだけでなく、人によって扱いが違うなど、人間関係のストレスが出てしまう等が挙げられます。

リーダーが意識すべきなのは、人間関係という心身のストレスから部下を守れるか、ということでしょう。

新しいルールを作り、徹底した運用を開始すればそれなりに反発が出てくるのが組織です。

しかし、そこで「嫌われないかな」のような感情を持ち込むことは一切やめ、リーダーというペルソナを被り、徹底してルール守らせることが必要と述べれらています。

チームが成長するかどうか。
それは、リーダーが感情に寄り添うことをやめられるかどうかが鍵を握っているのです。

 

②位置:対等ではなく、上下の立場からコミュニケーションする

今日の多くの会社は経営者をトップとして、役員、部長、課長、、、というピラミッド組織になっています。

ピラミッド組織である以上、上司が責任を負い、部下に指示し、部下は与えられた裁量の中で責務を全うし、上司はその仕事を評価する、という上司と部下それぞれの役割を全うすることが求められます。

この上下の立ち位置を明確に理解させることが必要と述べられています。

上下の立ち位置を理解させるためにリーダーがとるべき行動として、本書で紹介されている方法は以下の通りです。
・褒美で釣って仕事を依頼しない
機械的報連相をさせる(言い訳をさせない)
・事実だけを聞く(言い訳をスルーする)
・乗るべき相談だけ乗る
 ⇒・部下の権限では決められないこと
  ・部下の権限で決めていい範囲かどうか
  上記2つ以外の相談は乗らない

感情で評価したり、褒美で釣って仕事を依頼するなどの人情味あふれた人間臭いやり方は一切捨て、部下は機能として動かせ、ということでしょう。

どうしても部下の感情を気にしてしまいがちですが、ここでもリーダーというペルソナを被って感情は横に置いておくことが求められます。

ピラミッド組織では、立場が上にあがればあがるほど、孤独になります。

 

③利益:人間的な魅力ではなく、利益の有無で人を動かす

人が行動するきっかけはただ一つ、自分に利益があるときだけです。
人間的に良いリーダーであっても、部下にとってそのリーダーについていくことが利益で無ければ離れていきます

リーダーは、人間的に好かれることを目指すのではなく、
チームを組織としての利益に向かわせることが必要、と述べられています。

組織としての利益を獲りにいけば、その過程で得られる経験が各人の成長となり、つまりは個人の利益になるということです。

また、部下から人間的に好かれたいという思いがあると、部下から嫌われることを恐怖に感じるかもしれませんが、その恐怖は間違いです。

本来であれば、チームとしての成果が上がらないことに恐怖を感じるべきです。

恐怖を正しく感じることができれば、チームの成果は上がります。
本書では、”いい緊張感”という言葉で紹介されています。

いい緊張感を生むために本書で紹介されているのは
・言い訳の余地をなくす
 ⇒・あいまいな表現を具体的に問う(大体→何件中何件か、など)
  ・事実で詰める
・言い訳はスルーする
・ルール違反や成績が悪かった場合、必ず言及する
 例えば成績が悪くても何も言われなければそれでOKと受け取られてしまう
・貶すのではなく、事実で詰める
・健全な競争状態を作る
 ⇒ルール、公平さ、順位など

課長が自分の身を守ろうと思ったら、「課の成果が上がらないこと」に恐怖を感じなければなりません。「この瞬間に部下から嫌われる恐怖」が優先されているのなら、それは錯覚です。

 

④結果:プロセスではなく、結果だけを見る

学校教育とは違い、会社という利益を出さなくてはならない組織においては、プロセスがどうであれ結果を出さないと意味がありません。

また、人気者や仲がいい部下を評価することも言語道断です。人間的な魅力で評価をし始めるとチームの成果は出せなくなっていきます。
あくまで結果だけを見て評価することが必要です。

リーダーがやるべきことは、
目標設定し、仕事を任せ、結果を報告させ、評価すること
です。

いい緊張感を持つためには、
できなかったことを客観的事実に基づいて具体的に指摘すること
です。

そうして次回はその反省に基づいて改善していくことになります。このサイクルがいい緊張感を維持しながら成果を上げていくことにつながります。

何ができていないかを認識させることが、リーダーの役目です。

⑤成長:目の前の成果ではなく、未来の成長を選ぶ

チームが成長するとき、チームは健全な競争状態にあり、リーダーは管理することがメイン業務になります。

リーダーもプレイングマネージャーとして働く場合、
リーダーがトッププレイヤーとして目先の利益を追求しがちですが、間違いです。そのような組織は伸びません。
リーダーはマネージャーとしての仕事を優先すべきで、トップになるべきではありません

リーダーは、④で紹介したように、目標と結果からギャップを指摘し、どうすれば改善できるかを導くことが役割です。

「先頭の鳥がリーダーではない」ということです。
リーダーは、さらに上から全体を見渡し、指揮する立場にいます。先頭の鳥は、部下の中のトッププレーヤーです。

 

おわりに

仲良しこよしのぬるま湯では本来必要な緊張感が生まれず、組織としての成果が出せないというのは、私自身、実感するものがあります。

安藤広大さんの著書で紹介されているリーダー論は、人間関係を重視される方からはいろいろな意見があるようですが、私自身は組織としては必要なエッセンスだと感じました。

人間関係が良いから成果が出るのか、
成果が出たから人間関係が良くなっていくのか、
鶏卵問題的な話ですが、どっちだとも言い切れないというのが個人の見解です。どっちもあると思います。

しかし、一つ明確に言えるのは、人間関係を良くすることは目的じゃないということです。会社という組織である以上、利益を出してなんぼです。

正しく恐怖感を持つべきという考え方、個人的にカチッとはまった気がします。